【RIZIN】“ツヨカワ女王対決”山本美憂 VS RENA、勝敗を決したポイント

 9月25日さいたまスーパーアリーナで開催された、総合格闘技イベント「RIZIN」で、総合初参戦となる元レスリング世界選手権王者、山本美憂対シュートボクシング王者RENAとの対戦は、1R4分50秒、アームトライアングルチョークでRENAが勝利した。


 日本の立ち技格闘技をリードして来た25歳のRENA、対して格闘一家・山本家が誇るレスリングエリート山本美憂は42歳。17歳という年齢差もさることながら、同じ格闘家とはいえ全く違う道を辿って来た二人。日本の女子MMA史上初のビッグカードとして開催当初から注目されていた試合だけに、互いに負けられない緊迫感漂う内容となった。

 この数ヶ月間、山本家総動員で美憂をMMAファイターとして仕上げてきた意気込みは、ゴング開始直後の軽やかなステップからも感じ取れたが、一方のシュートボクシング女王のRENAにとって絶対的に自信のあるスタンドでの攻防、ジリジリと距離を縮めながらコーナーに追い詰めプレッシャーをかけて行く。対して山本はRENAの制空権での打撃への警戒からサークリングを描きながら距離を窺う。


 この1分間の攻防の後に最初にローを仕掛けて来たのは山本。これは空振りに終わるが弧を描きながら距離を縮めて行く。RENAは慎重にスイッチを繰り返しながらプレッシャーをかけ続けた。探り合いの均衡が破れたのは開始から2分40秒を回ったあたり。RENAの左ジャブから右ボディへの蹴りのコンビネーションで腹部を捉えた瞬間に、山本が高速タックルでRENAの左足からテイクダウンに成功し、首を掴みながら顔面へのパウンド攻撃を仕掛ける。


 しかしRENAも寝技に持ち込まれた時のMMA対策はバッチリだ。ディフェンスしていた両足で山本の体を持ち上げ、僅かに空いたスペースから左足で顔面への前蹴りでエスケイプに成功。


 再びスタンドでの攻防になるが、ここも山本の本能ともいえる低空でのタックルで2度めのテイクダウン。ボディ、顔面とパウンドを打ち込むが、RENAも防御を固めながら下から打撃を繰り出し、再度両足で持ち上げると、今度は右足かかとが顔面を捉え、下からパンチを連打すると崩れ落ちた山本の後頭部へパウンドを連打。


 打撃を何発も貰いながらも必死に右足を掴みタックルを試みる山本に対して、RENAがフロントチョーク、それでも山本は執念で足を離さずに立ち上がり、ロープ際まで押し込む。しかしここでRENAの強烈なワンツー、前から倒れながらもここでも山本はレスラーの本能か相手の足目掛けてタックルを続ける。RENAの頭部への連打の嵐と、フロントチョークに一度は立ち上がった山本美憂だが、ガッチリと首をフックされると堪らず1R残り10秒を残しタップ、勝敗が決した。

 約5分間の攻防には、両選手の格闘家としてのバックボーンも含め様々な生き様が投影されていた。間違いなく勝負を分けたのは、2度のテイクダウンの場面でのRENAの防御から攻撃への切り替えだ。レスリング元女王の得意とするタックルを想定した上での、RENAの下からの蹴りを突破口に見せた攻守の素早い逆転は、MMA経験2戦目とはいえ、経験と試合に向けた備えで「一日の長」といえた部分。男子の試合でも、キックボクサーが寝技に持ち込まれると圧倒的に不利という場面を何度も見てきただけに、彼女のMMAへの適応能力を感じさせた場面。今後RENAが日本の女子MMAをリードして行く試金石となった試合といえるだろう。


 一方、敗れた山本美憂だが、彼女もまた初戦で自身のストロングポイントであるレスリング技術をリングの上で体現出来たという意味では、結果以上の成果といえる。当初懸念があった「打撃への免疫」という点でも、思った以上にタフな面がみられ、特に劣勢になった場面での執拗なまでのタックルへの拘りには鬼気迫るものがあった。


 試合を振り返ると、テイクダウン後の攻撃面と、時折みられたディフェンス面の甘さなど、新たなリングで対応すべき点を挙げるとキリがないが、山本家にはKIDや息子アーセンが戦った来たノウハウもある。


 試合前は、息子のアーセン山本と「親子同時マッチ」や、「42歳での挑戦」という年齢面での無謀さなどがとかくクローズアップされたが、もはや年齢のことも息子とのセットでのプロモーションも必要ないだろう。MMAへの参戦継続を明言した山本美憂というファイターをもう少し見てみたいと思っている人は少なくない筈だ。


photo:(C)RIZIN FF / Sachiko Hotaka


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