【Krush】小澤海斗、タイトル防衛も「申し訳ない。出直すわ」 高い理想像とKrushイズム

打撃格闘技イベントKrushでは、常に選手の“イズム”が問われる。ただ勝ちたいというだけでなくどう勝ちたいのか、観客に何を見せたいのか。プロとしてそれを考え、実践していくことが求められるのだ。

3月3日の後楽園ホール大会、メインイベントでユン・チーを相手に-58kg王座の防衛戦を行なった小澤海斗は、KOを見せてこその自分であり、Krushであると考えていた。だから、結果としてタイトル防衛に成功はしたのだが、判定2-0での勝利にはまったく喜べなかった。

「申し訳ない。出直すわ」

何度もそう言った小澤。インタビュースペースでは「倒せる場面で倒しきれなかった」と反省点を述べた。


ただ結果は僅差の判定だったが、小澤が消極的だったとか、守りに入ったというわけでは決してなかった。パンチ力に定評のあるユンに対し、蹴りを使ってペースを掴みにかかったのだが、そうして相手の持ち味を封じるだけでは終わらなかった。

自分もパンチが得意なだけに、仕上げはやはり拳で、ということだろう。相手のパンチも当たる危険な距離に踏み込んでの打ち合いを何度も見せた。その姿勢自体を見るか、倒せなかったという結果を見るかで、この試合への評価は変わってくる。

小沢の自己評価は、あくまで後者だったということだ。それは表現を変えれば、抱いている理想が高いということでもある。選手は命がけで闘っているだけに、どんな内容でも勝てばとりあえずはホッとするもの。タイトルマッチならなおさらだろう。しかしこの日の小澤に、そういうそぶりは一切なかった。小澤には高い理想と、向上心だけがある。そこにも“Krushイズム”があるのだと言っていい。


セミファイナルでは、久々のKrush復帰を果たした木村“フィリップ”ミノルが西川康平と対戦。代名詞でもある強烈なフックを炸裂させて先制のダウンを奪ったものの、一瞬の隙を突かれて逆転KO負けを喫した。

試合前、木村はKrushの試合を手堅く勝ってK-1出場につなげようとする選手たちに苦言を呈していた。もっとガツガツと、Krush自体のバリューを上げるための試合をしなくてはいけない、と。西川戦でのダウンの応酬、逆転KOは、まさにKrushらしいものだった。いわば、負けることで“イズム”を体現してしまったのだ。


もちろん、勝負は勝つためにやるものだ。しかし“イズム”を持つ選手に「単なる勝利」や「ただの負け」はない。物語は続いていくし、ファンは1回ごとの勝ち負けだけでなく、物語を見ているのだ。


文・橋本宗洋

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