新日本「LION'S GATE」と全日本「GROWIN'UP」 老舗団体が揃って“育成大会”を開催する理由

(5.9全日本。青柳を“拷問コブラ”で締め上げる秋山。若手の壁としてベテランの力量、怖さも見られた)


5月9日、新日本プロレスが新宿FACEで大会を開催した。興行タイトルは『LION'S GATE』。後楽園ホールよりも小さな会場を舞台にした、若手の育成と活性化をテーマとする闘いだ。第1試合では、八木哲広がデビュー戦を行ない、メインでは岡倫之&北村克哉のヤングライオンコンビが中西学&永田裕志も第三世代タッグの挑んでいる。


先輩の胸を借り、キャリアを積むのも若手にとって重要な経験だ。団体の未来を担うのは若い選手。彼らが壁にぶつかりながら成長していく姿を見るのも、ファンの楽しみの一つ。若手時代から応援してきた選手がメインイベンターになるのは、大きな喜びだ。新日本は昔から、ヤングライオン杯や『夢☆勝ちます』といった大会で若手の育成に力を入れてきた。


また『LION'S GATE』では、他団体の選手にも門戸を開放。今大会ではHEAT-UPの兼平大介がYOSHI-HASHIと、KAIENTAI-DOJOの吉田綾斗が小島聡と対戦している。いずれも敗戦となったが、小島は吉田の力量を絶賛。


邪道・外道をはじめ、新日本は他団体出身の選手も戦力にしてきた。オカダ・カズチカももともとは闘龍門、ケニー・オメガはDDTで育った選手だ。真壁刀義がアパッチプロレスでの闘いで大きく成長したのはファンなら誰もが知る話。

(全日本にたびたび参戦している大日本の野村は岡田に逆片エビ固めで勝利。ノアにも出場するなど、デビュー1年ほどだが評価が高い選手だ)


90年代には各団体のトップ選手が集結してJr.ヘビー級の黄金時代を築いた。メジャーやインディーといった区別なく、所属になる、ならないも別として、新日本は常に“新しい血”を求めている。


同じ5月9日には、全日本プロレスが『GROWIN'UP』という大会を新木場1st RINGで開催している。こちらも大会名が示すように“育成”がテーマ、かつ他団体の選手も参戦するものだ。ジャイアント馬場時代の全日本は“鎖国”体制で安定した運営をしていたが、現在は積極的に他団体と交流している。インディーと呼ばれる団体の選手も力さえあればどんどんチャンスが与えられ、そのことでインディーファンも全日本に注目するようになった。


たとえば、団体最大のイベントであるシングルリーグ戦チャンピオン・カーニバルだ。昨年、大日本プロレスの関本大介が優勝したのに続き、今年はフリーの石川修司が頂点に。石川も大日本やDDTを主戦場にする選手だ。また現在、世界Jr.のベルトを巻いているのは(全日本のレギュラーだが)パンクラス所属の佐藤光留だ。


5.9新木場大会では、岡田佑介が大日本のホープ・野村卓矢と張り合い、高尾蒼馬&渡瀬瑞基のDDTコンビが佐藤光留を苦しめ、怒りを引き出した。大会ベストバウトはジェイク・リーvs岩本煌史だろう。勝ったジェイクの豪快なヒザ、バックドロップだけでなく、岩本の寝技も光った。


メインは宮原健斗&野村直矢&青柳優馬vs秋山準&大森隆男&渕正信の6人タッグ。今年のチャンピオン・カーニバルには出場せず、トップ戦線からは一歩退いた感もある秋山が若い青柳、野村を相手に“怖さ”を見せ、そうかと思えば三冠ヘビー級王者・宮原と大ベテラン・63歳の渕がやり合う場面も。


最後は宮原にスリーカウントを許した渕だが、観客からは大拍手。宮原と渕は、タイトル争いが主軸となる普段の大会ではなかなか見られない顔合わせだろう。若手育成興行でありつつ、若い王者に挑むベテランの姿も堪能できたわけだ。


業界を牽引する新日本はもちろん、一時は苦境が伝えられた全日本も後楽園ホールを超満員にし、下半期は両国国技館、横浜文化体育館でのビッグマッチ開催と好調だ。その理由として、このような“育成”と“交流”も挙げられるのではないか。


文・橋本宗洋

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