“デスマッチ侍”木高イサミ、「見栄を張り続ける」 デビュー15周年興行は「世界観」と団体の未来を見せる

DDT、大日本プロレスでもトップのベルトを巻いた“デスマッチ侍”の異名を持つ人気レスラー・木高イサミ率いるプロレスリングBASARAが、10月1日に後楽園ホール大会を開催する。2016年に新宿FACEで旗揚げ戦を行なって以降、これが3回目の“聖地”進出。今回はイサミのデビュー15周年記念大会だ。

シリアスかつコミカルかつ無鉄砲。どんなスタイルでもやってのけるイサミ。


しかし、そこでイサミが名乗りをあげたのはトランザム★リュウイチとのユニオンMAX選手権。BASARAの前身であるユニオンプロレスから引き継いだベルトのタイトルマッチだ。デビュー15周年記念試合としてキャリアを振り返るような相手と闘うほうが話題性がありそうなのだが、イサミが選んだのはシングル王座の奪還だった。


実は9月に開催されたBASARAの興行で、キャリアにゆかりの深い相手との記念試合は行なっており「過去には区切りをつけた」とイサミ。後楽園ホールという大事な会場での試合だからこそ、団体の本流であるタイトルマッチを望んだのだろう。


チャンピオンのリュウイチは、BASARAマットを席巻するアメリカン・レスラー軍団「トランザム★ファミリー」のメンバー。見た目は大日本プロレスの河上隆一に似ているが、リュウイチによれば「カワカミ、WHO?」とのこと。ちなみにファミリーを率いるのはトランザム★ヒロシ。BASARA最強外国人を名乗るこの男は、昨年、福田洋から改名している。田中稔にそっくりな“アメリカン・ヒート”ことトランザム★タナカもメンバーだ。

記者会見にて。イサミと対峙しても1ミリたりともまともなコメントを残さなかったトランザム★ファミリー。


リュウイチの武器は「ビッグチェスト&ビッグアーム&キュートニップル」(ヒロシ)、「&ビッグマグナム(股間の)」といった具合なのだが、リュウイチが実力者であることは間違いなく、今年、BASARAのリーグ戦を制するとともに磐石の防衛を続けている。ちなみに得意技の一つは、ロープではなくエプロンでの「拝み渡り」である。


そんなリュウイチに勝つために「世界観をぶっ壊す」とイサミ。あまりにバカバカしく、しかし揺るぎないトランザムワールドを木高イサミワールドで凌駕してこそ勝利を得られるということだ。


「今までのチャレンジャーは、独特の世界観に呑み込まれていた。僕はその世界観をぶっ壊す試合がしたい。僕ならできるし、僕にしかできない」


BASARAという団体自体、最大の魅力は世界観だと言える。トランザム★ファミリーはじめ悪ノリし放題、オールスタンディングの飲み放題付きイベント「宴」興行も人気だ。そしてBASARAのリング上で展開される闘いは、何よりも熱くて男くさい。イサミによれば、それは少年マンガの世界観であり「友情、努力、勝利。でも努力はあんまりしたくないのが俺らですから」となる。


タイトルマッチはイサミvsトランザムの世界観対決。同時に大会そのものが観客にBASARAの世界観を問うものでもある。「イサミvs所属選手たち」という面も見逃せない。今大会では関本大介vsSAGAT、宮本裕向vs中津良太と、イサミゆかりの選手たちがBASARA所属選手と対戦するのだ。


BASARAの成長のためには、イサミに続く選手の飛躍が必要不可欠。そのために「もっと自由に、もっとメチャクチャ、ハチャメチャにやっていくことが団体の未来になる。みんなもっと我を出してほしい」とイサミ。「まだ僕が一番自由にやってるので」とも。


もちろん団体の代表としての責任感も強く、大会直前まで営業活動も続く。そんな中でも、大会当日は「誰よりも楽しんでみせます」とブログで宣言している。


「15年のプロレス人生で学んだのは見栄を張ること。どれだけ悔しくたって、見栄を張り続けることしかできないんですよ」とイサミは言う。団体の規模は小さい。知名度もまだまだ。それでも見栄だけは張り続けるのがイサミの、BASARAのやり方だ。


後楽園大会で話題になりやすい“記念試合”よりも団体の本流であるタイトルマッチに出場することも、所属選手に試練を与えるマッチメイクも、イサミの「見栄」であり心意気だろう。あるいは、DDTグループの団体にもかかわらずDDTの力を借りないマッチメイクも。BASARAファンは、その心意気が作る世界観を味わっているのだ。


文・橋本宗洋

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