プロレス会場でもっともよく見かけるミュージシャン!サイプレス上野、「プロレスもヒップホップも、自分で見つけて自分で掘っていくのが好き」

今、プロレス会場の客席でもっともよく見かけるミュージシャンといえば、大槻ケンヂかサイプレス上野だろう。今年、ヒップホップグループ「サイプレス上野とロベルト吉野」がメジャーデビュー。『フリースタイルダンジョン』出演でも人気を高めたサ上ことサイプレス上野。以前からプロレスファンとして知られ、今年の新日本プロレス1.4東京ドーム大会ではオフィシャル・テーマソングも担当している。そんなサ上がプロレスについて語るレギュラー企画がこの度スタート。まずはそのファン歴を語ってもらった。

(聞き手・橋本宗洋)

——上野さんはお兄さんの影響でプロレスを見るようになったんですよね。

上野 物心ついた時にはテレビで見てましたね。幼稚園くらい。週プロ(週刊プロレス)、ゴング、東スポ(東京スポーツ)が常に家にある状態で。


——じゃあ家族に「あんなの八百長だ」って言われるプロレスファンあるあるはなかった?

上野 父親はずっと言ってましたよ。で、それに対して兄貴が理論武装するっていう。小学生の頃は『ワールドプロレスリング』がまだ夕方からの放送だったんで、それ見た同級生に「八百長じゃねえか」って言われたり。そういうヤツには技かけてやりましたけどね。「じゃあお前がいま痛いのも八百長なんだな」って(笑)。


——やっぱりそこで闘いますよね、プロレスファンは。自発的に見たというか、会場に行くようになった団体というと?


上野 小学校高学年の頃から中学生の頃かな、FM(W)の川崎(球場)行って、そのあとW★INGにハマったんですよ。当時は金もないから会場には行けないんですけど、雑誌で見たり、W★INGのことばっかり考えてましたね。


——W★INGのことばっかり考えてる中学生(笑)。

上野 すげえことが始まったぞ! って。実際にはすごくなかったって噂もありますけど(笑)。TBSの『ギミア・ぶれいく』って番組で特集も流れたんですよね。それを田舎のばあちゃんちで見て「こんなもん見るな」って怒られたりしましたよ(笑)。

そりゃ松永(光弘)とかレザーフェイスとか理解できねえよっていう。


——W★INGをあらためて説明すると、怪しげな魅力満載のデスマッチが主力ですよね。プロレスファンとしてそっちの方向に進んだ心理ってどんな感じでした?

上野 アンダーグラウンド志向っていうか「誰も知らないだろ」っていう楽しさですよね。あと植地(毅)さんが作ったTシャツもカッコよかったんですよね。ファッションとしてカッコよかった。


——インパクトありましたよね。

上野 当時はプロレスTっていったらダサいのが普通だったのに、W★INGだけ違いましたね。それを(浅草)キッドが着てたのも大きかったですよね。『浅草橋ヤング洋品店』とかで。


——それってムックの『プロレス秘宝館』で紹介される前ですよね。リアルタイムで。

上野 全然前ですね。だから自分で勝手に気づいちゃったんですよ、底なし沼の存在に。それで余計にハマって。そこから高校生くらいで後楽園ホールにも行くようになって。その頃は渋谷でレコード買って、水道橋でグッズ買ってみたいな。


——ヒップホップも、そんなに大きくメディアに取り上げられる時代じゃなかったですよね。

上野 ディスクユニオンも水道橋チャンピオンも「仲間内で俺しか知らない聖地」みたいな。プロレスの会場もそうですよ。一人で行ってたんで。ちょっと興味を持ったくらいのヤツと行っても、話についてこれないからメンドくさいんですよ(笑)。


——じゃあプロレスもヒップホップも、ファンとして自分で発見する、自分で掘っていくっていう行為の魅力というか。

上野 その要素はデカいですね。自分が見つけたから嬉しいし、自分で掘っていくのが楽しいし。いま思うと共通する魅力があったなって。そこからの流れで今もデスマッチをよく見てますし。

でも今は特定の団体にハマるっていうより、雑誌を見るのも含めて幅広くですね。好きなのはデスマッチなんですけど。だから熱狂的に一つの団体を推す、一人の選手を追いかけるっていうのがないので、少し寂しくはあるんですけど。でもそれは若いファンに任せてもいいのかなって思うし。


——「見てみたら面白かった」っていう団体も多いですからね。

上野 こういう仕事をしてると選手を紹介されたり、選手から「聴いてます」って言ってきてくれたりで自然と広がるんですよね。選手と友だちになろうとは思わないんですけど。


——プロレス観戦を付き合いとか「友だちの応援」にはしたくないっていう。

上野 友だちになっちゃうと純粋に見れないっていうか。いろいろ裏側を知ってもつまらないかもしれないし、やっぱり純粋にファンとして見たいですよね。

今日も新木場(1st RING)で大日本(プロレス)見てきたんですけど、誰にも言わずにチケット買って。竹田(誠志)選手とか知り合いだから本人からチケット買うほうがいいのかもしれないんですけど、そうすると当日、向こうもちょっと意識するかもしれないじゃないですか。


——「今日、上野さん来てるんだな」って。

上野 ファンとしてはそういうふうにも思ってほしくないんで(笑)。黙って行って。で、場外乱闘の時に目が合って「あ!」っていう(笑)。


——サ上とロ吉の活動で葛西選手や越中(詩郎)選手に登場してもらうのも、ファンとしての憧れからっていう。

上野 ほんとそうですね。


——そういう人が新日本プロレスの1.4東京ドームのオフィシャル・テーマソング(GET READY)を担当することになったんだからすごいですよ。

上野 ビックリしましたけどね。「え、俺?」って。サンボマスターの木内(泰史)さんとか、いろんな人に「うらやましい」って言われたんですけど、GAGLEのHUNGERくんには「あの曲すごいよかったよ。でも……プロレス好きすぎだよね」って。


——愛が溢れすぎて(笑)。

上野 「新弟子が作った曲かと思った」って(笑)。今までプロレス絡みの企画に詳しくもないミュージシャンが出て行って、ファンが冷め切ってる地獄の状況を何度も見てますからね。「そうはならねえぞ。ファンとしての思いをぶつけてやる」って思ってたら濃すぎたんですかね。


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