闘う事は「運命」 オメガvsジェリコはWWEでも新日本でもない“新たなプロレス”が生まれる

1月4日開催される新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」(WK12)のダブルメインイベントの一つ、IWGP USヘビー級選手権、ケニー・オメガ対クリス・ジェリコ。11月に唐突にアナウンスされ驚きを持って迎えられた元WWEスーパースターの黒船来襲。12月の福岡大会でケニーをジェリコが襲撃、血にまみれた因縁が繰り広げられるなど大会に向けて急速に対立構造が演出されたが、この2人のレスラーにまつわる日本のプロレス界との因縁や、裏に秘められたストーリーを辿るとこの対戦の必然性が見えてくる。


すでにプロレス・ファンの間では語り尽くされているが、2人には共通点も多い。共にカナダのウィニペグ出身、日本でのマット経験…1970年生まれ13歳年上のスーパースターの背中を、ある時期までオメガが追って来たことは容易に想像できる。


その一方でこの2人は日本のマットを原点に持つレスラーでもある。クリス・ジェリコもかつては日本のFMWやWAR、そして新日本プロレスといったリングを渡り歩き、その後WCWからWWEへの上り詰め日本経由で夢を掴んだレスラーの一人だった。軽量級で空中殺法を得意とし、ベビーフェイスからヒールターンなど経験しつつも、どちらでもないダークヒーロー的なポジションに落ち着いたあたりもDDTなどの参戦を経て現在に至るケニー・オメガと符合する。とはいえ、メジャーリーグであるアメリカを目指したクリスと、日本から世界に向けてストロングスタイルを発信するケニーと、00年代と今現在のプロレスシーンなど争う環境が両選手が全く異なるレールに乗ったことでも明らかだ。


昨年、オカダや内藤らとベストバウトを連発したケニー・オメガは、自身のキャリアにおけるピークに達しようとしている。このタイミングでクリス・ジェリコと一戦交えるということは実に象徴的な出来事といえる。互いのレスラーとしての成り立ちに、少なからずシンパシーを覚えるような状況についてクリスもオフィシャルインタビューで明かしている。


「ケニーは、俺とおなじカナダのマニトバ州ウィニペグ出身。そこにも特別な繋がりを感じている。そして彼も俺と同じように日本で成長した、俺はこのWK12が52回目の来日だ。俺たちはただのガイジンじゃない名誉日本人的な立場だ。」その上でクリスにとって、この対戦が、単なる「スーパースターの凱旋」といった生易しいものではなく「試練」と位置づけているのは、日本マットのスタイルやファンを熟知した上の自覚かもしれない。


「この対戦は俺にとっても試練でもある。ケニー・オメガが話題の中心だ彼の試合は7つ星、ベストバウト・マシーンだと言われている。気に入らない、そんな事は聞きたくない、俺以外の誰かが世界最高なんてありえない、それら全てが、なぜ俺がケニー・オメガとの対戦を望んだかの理由だ。彼のホームである日本でやってやる。ケニーのスタイルは素晴らしい、新日本的スタイルだ、しかし俺の中にも新日本スタイルは存在する。WARスタイルや他の世界のレスリングのスタイルもね…」その言葉には長年積み上げて来たキャリアへの自負を強調する。


その上で「27年間プロレスをやって来た俺にとっても楽しみな試合、新日本だけでなく世界中のファンが興奮しているだろう。そしてケニーのキャリアにおいても全く新しい世界感を見せられるはずだ。タイミング的にも今が完璧、昨年でも来年でもダメだった今だからこそのジェリコvsケニーなんだ。」と原点ともいえる日本のプロレスファンの前で、最高のパフォーマンスを見せる強い意欲が感じられる。


昨年の1.4以降、ケニー・オメガに何度となく取り沙汰された海外への移籍騒動。実際、オカダ戦のインパクトから水面下で様々なやりとりが行われていたことは容易に想像できるが、敢えて新日本マットから「世界のケニー・オメガ」を目指すことを宣言したことは、グローバル路線を求める日本マット界にとっても画期的な出来事の一つだった。


「団体を背負って立つ身」と新日本プロレスを代表する現在の自身への誇りを強調する一方でこの対決について「プロレスの神髄は闘いである。この試合は闘いだ男同士の一騎打ちでどちらが強いかを決める。」と闘志を剥き出しにする。その言葉の節々からは昨年のオカダと繰り広げた「新日本スタイルの最高傑作」とはまた違った切り口でファンを驚かせようと画策するベストバウト・マシーンの姿がそこにはある。


クリスもまた「WK11のオカダVSケニーがヤングライオンの第一試合に見えるような対戦になるだろう」と鼻息は荒い。日本のファンは何度となく世界的なトップレスラーの余興的でいまいち物足りない試合に裏切られて来たが、この2人に関しては「日本流」に独自の要素を取り入れた世界を驚かせるプロレスを見せてくれる可能性が高い。そこには「WWEでも新日本でも無い新たな道」が生まれるワクワク感がある。


「日本で育ち世界に羽ばたいたスーパースター」α(アルファ)ことクリス・ジェリコと「日本から世界のトップを目指すニュースター」Ω(オメガ)ことケニー・オメガ。カナダの片田舎で育ち、日本でブレイクした2人の外国人レスラーにとっての運命の闘いがまもなく始まろうとしている。

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