「俺にファンはいない、いるのは仲間だけ」“観客と一番近い王者”木高イサミ

木高イサミが代表を務めるプロレスリングBASARAは、毎月の新木場1st RING大会を飲み放題付きイベントにするなど独自の運営と個性の強い選手たちが織りなす世界観が魅力だ。特にイサミは、デスマッチでも頂点に立った激しい試合ぶりに加え“熱血”と“笑い”を絶妙にブレンドさせてプロレスファンの心を掴んでいる。

今年初の大阪遠征となる1.8平野区民ホール大会では、FUMA相手にユニオンMAX王座の防衛戦を行なった。ユニオンMAXはBASARAの前身であるユニオンプロレス時代から何度も巻いた、思い入れの深いベルトだ。


試合前半、目立ったのはFUMAの攻勢。イサミのトペをイスで迎撃して流血に追い込み、場外ではイスを積んだ上にアバランシュ・ホールドで投げつける。昨年、ヘヴィメタルのライブとコラボした自主興行『FUMA FEST』を開催、メインでデスマッチのカリスマ・葛西純と対戦したFUMA。それ以降、イサミに言わせれば「リング上の顔つきが変わった」。レスラー人生における大きなターニングポイントを経験した、ということだ。このタイトルマッチでも、FUMAの闘いぶりは自信に満ちていた。


ただ、そこで後輩に譲らないのがイサミだ。BASARAの代表として所属選手たちの成長と自己主張を促してきたイサミだが、もはやFUMAは実力も我の強さも充分。だからイサミも容赦なしの攻撃を加えていった。とりわけエプロンでのブレーンバスターは抜群のインパクト。さらにクライマックスとなる大技の攻防、丸め込み合戦、蹴りの読み合いはスリリングで、バズソーキックから勇脚・斬へとつなげたフィニッシュのたたみかけは、イサミの真骨頂とも言える動きだった。

防衛に成功したイサミはFUMA の力を認めるとともに「BASARAを始めて2年、変なレスラーを大量に輩出してしまった」と、呆れつつも充実した口調で語ると「ボロボロになっても走り続ける」と宣言。そして普段はバックステージで行なう記者陣とのコメント取材をリングサイドで実施した。これは咄嗟の思いつきだったようで、理由は「売店にいる時間(サインや写真などでの観客との交流)か短くなるから、ここで」というもの。ちなみにエプロンに座って観客に語りかけるスタイルにすると、ガンバレ☆プロレスの大家健と被ってしまい、「健さん好きすぎて被りたくないのよ」とのことで取材形式に。


平野区民ホールでは1月7日、8日の2日間、DDT本体、同じDDT系列の東京女子プロレスとBASARAが連続で計4大会を開催。BASARAはその締め括りだった。そんな大会で、イサミは団体の現状についてこう語っている。


「悔しいかなDDTにも東京女子にも集客では叶わない。でもあきらめずに闘うから。いつか見てろって」


また『踊る大捜査線』のセリフ「俺に部下はいない、いるのは仲間だけだ」をアレンジして「俺にファンはいない、いるのは仲間だけだ」とも。最後は、その“仲間”たちをバックにベルトを掲げて記念撮影、これも新たな試みだ。


イサミはインディーマット屈指の人気選手。しかし「ここを見てもらえれば僕というレスラー、僕という人間のことが分かってもらえる」というホームリング・BASARAの知名度はまだ高くない。見てもらえればその面白さが分かるが、見てもらうためにどうするかの試行錯誤といった段階だ。


最近のイサミは、DDTや東京女子プロレスを意識していること、注目度や集客力の面で悔しさを感じていることをはっきり口に出している。単に試合を提供するだけでなく、そうした思いを会場にいる全員と共有し、一緒に前進していきたいということだろう。だから“ファン”ではなく“仲間”なのだ。


誰よりも距離が近いピープルズ・チャンピオンとして、どれだけ仲間の輪を増やせるか。イサミとBASARAの飛躍をかけた2018年が始まった。

文・橋本宗洋

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