世界よ、これがパンクラスだ。早くも「2018年のベストバウト」決定か 仙三vs若松佑弥、魂を震わせる大激闘

2月4日新木場スタジオコーストで開催された「PANCRASE293」。フライ級キング・オブ・パンクラス・タイトルマッチ、仙三vs若松佑弥は、間違いなく「2018年のベストバウト」に挙げられるであろう、魂を揺さぶるような戦いが繰り広げられた。


35歳の苦労人チャンピオン・仙三と飛ぶ鳥を落とす勢いの23歳の新鋭・若松。正直なところ、下馬評では若松が優位であった。仙三には大変失礼な話だが「短いラウンドでもKOで若松、ラウンドが進んだら更に若い若松」そんな声も周囲から聞こえていた。パンクラスのK.O.P.タイトルをあくまで通過点と公言し、UFCを目標に掲げる若松の強力なプレゼンテーション能力が、そんな意見を後押しした感もある。


しかし、フタを開けてみたら、35歳の王者が巧みな試合運び、驚くべき気力、および集中力で5ラウンドTKO勝ちで試合を制した。


1ラウンドから絶妙に距離を取り若松の打撃を貰わない仙三の戦術が光る。とにかくKO能力の高い被弾を避けながら、ピンポイントで当てる仙三のボクシング技術がハマり、序盤でのKO決着の芽を積んでいく。対する若松の冷静に状況を見ながら一撃を狙うが、王者の軽快なフットワークからの逆襲に後退する場面も…。


2ラウンドに入るとスイッチが入ったように猛攻から強打を放つ若松を、いなすように仙三はフットワークを活かした戦いを続ける。何度か若松のパンチをかすめる場面もあったが、決定打には至らない。その一方で必ずといっていいほどラウンド後半になると積極的に前に出て積極的に当てにくるあたりに、判定も見据えた老獪さを感じさせた。


変化が訪れたのは3ラウンド。このラウンドから、サークリングしつつも仙三は距離を取らずに、ヒット・アンド・アウェイを繰り返すようになる。まだまだスタミナのある若松も前にでて打ち合いで真っ向勝負。両者大振りで一発狙う展開の中でも集中力が切れることなく激しい打撃戦が続く。


4ラウンド、すでにフラフラになっている王者に、チャレンジャーの若松がトドメとばかりにハードなパンチを放つが、1R同様に飛び交う弾丸を縫うように仙三がポイント上では有利と見て持ち前のフットワークやフェイントを繰り返し試合をコントロールする。しかしラウンド残り30秒、ついに若松の右フックを被弾しダウン、追い込まれるがゴングに救われる。


この時点で、ダメージの大きい仙三に若松の5ラウンドでの猛攻は十分に予想されたが、残された気力を振り絞るようにヒザ攻撃からケージ際でのパンチ、にさらにヒザと王者が猛攻に出る。ヒザでダメージを追った若松の顔面に2発3発とパンチが入りケージ際での容赦ない仙三のヒザに難攻不落の23歳がスタンディングのまま崩れ落ちた。


壮絶な試合を制した仙三は涙ながらに「なんか試合前に色々あって苦しくて……体調を崩しちゃったり、練習できなかったりして、でずっと一緒に暮らしてたお婆ちゃんが一週間前に亡くなっちゃって。天国行っちゃって。色々とすごい不安になって”勝てるかな……”とか、ずっと思ってたんですけど。いつも応援してくれる皆さんがいるから今回頑張りましたすいません泣いて。練習も耐えて頑張れました、ありがとうございます」と亡くなったお婆ちゃんの写真を天に掲げ「勝ったぞ!」と勝利を捧げた。


そのあとさらに仙三は「最強の挑戦者の若松選手に勝ったので…」とUFC挑戦をアピール。「自分にはトップのUFCファイターにも負けない気持ちという武器が有るので、UFC行っても自分だったら海外の強豪にも負けない。UFC行ってオファー下さい日本で一番強いストライカーは自分なんで」と猛烈アピール、心に秘めていたUFCへの思いを明かした。


敗れた若松にとってはパンクラスでの連勝が止まり、公言していた海外へのアピールから遠のいてしまったかもしれないが、最後まで前に出て一歩の引かない彼らしいスタイルで砕け散る潔さを感じさせてくれた。


試合後自身のインスタグラムでも「今回タイトルマッチということもあったのと色々な思いがありずっと準備してこの日の為に賭けてやってきたつもりでいました。体調、メンタル、全て過去最高でした。長南さん、ニックさん、チームのみんな僕のために時間も割いて練習に付き合ってくれました。


でも仙三選手の方が強かったです。試合は負けたけど、気持ちも負けてないし、心も折れてないです!こんなことを言うのはおかしいかもですが、昨日で僕は相当気持ちの強さや、格闘技の厳しさが改めて身にしみました。必ずUFCに行く。絶対強くなった!」と試合を振り返った。


若松の言うとおり、この試合は単なる敗戦ではない、「強くなるための通過儀礼」のような試合になったはずだ。

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