アプガ(プロレス)、デビュー半年の成長ぶりは 東京女子プロレス×アプガ(仮)コラボイベント開催へ

“筋肉アイドル”才木玲佳や“クビドル”伊藤麻希も参戦する東京女子プロレスで、今年1月4日にデビューしたのがアップアップガールズ(プロレス)、だ。

(アプガ(プロレス)のメンバー。左からヒナノ、ヒカリ、ミウ、ラク)


日本武道館公演も開催したアイドルグループ・アップアップガールズ(仮)の妹分。東京女子プロレスが属するDDTグループとアプガの合同企画として、オーディションから4人のメンバー(ラク、ヒカリ、ヒナノ、ミウ)が選ばれた。


人気レスラーがCDデビューする、アイドルがプロレスに挑戦するといった従来のパターンとは異なり、アプガ(プロレス)はアイドルとプロレスの完全同時進行で“歌って踊って闘える”グループを目指している。


どちらもゼロからのスタートだけに、技術も体力も、舞台度胸に関しても「アイドル(レスラー)ならではのメリット」がまったくない状況。アイドルとしてもレスラーとしても“ド新人”として学んでいく必要があり、それだけ時間もかかる。何しろ初心者が二足のわらじを履いているのだ。レスラーとしては体を大きくすれば武器になるのだが、メンバーによっては“アイドルとしてダイエットしなきゃ”と考えたりもする。


手探り状態という意味では、旗揚げ期の東京女子プロレスに似ていると言ってもいい。東京女子所属選手は生え抜きのみ。山下実優ら初期の選手たちは頼るべき先輩や女子プロレスのお手本がない中で、独自にプロレスについて考え、研究する必要があった。


デビュー戦はメンバー4人のタッグマッチ(ヒナノ&ミウvsラク&ヒカリ)。唯一、もともとレスラー志望だった(過去にも入団テストを受けていた)ヒカリが敗者となったのが印象的だった。この点に関しては“アプガらしさ”か。アプガ(仮)は、ハロプロエッグ(研修生)からデビューできなかった面々で結成されたグループ。つまり負けからその歴史が始まっている。プロレスが一番好きで一番詳しいヒカリが悔しさを味わうことから、アプガ(プロレス)のレスラーとしてのキャリアは始まった。


デビューから約半年が経ち、メンバーは試合に出続け、アイドルとしても「対バン十番勝負」を敢行するなど経験を重ねていった。メンバー同士の対戦だけでなく先輩レスラーと絡むことも増え、その実力を体感することが成長を促してもいる。まだ確立されたとまでは言えないが、それぞれの個性、ファイトスタイルもファンに伝わり始めている。


学生時代ソフトボール部だったミウはデビュー戦の勝者。カナディアン・バックブリーカーやベアハッグを得意とするパワーファイターだ。デビュー戦では敗れたが、初シングルでミウを下したヒカリは回転足折り固めというテクニカルなフィニッシュ技を持つ一方、気持ちが伝わる闘いぶりが大きな魅力。最近ではNEO美威獅鬼軍と連戦し、沙希様の視界にも入ったようだ。この2人はメンバーの中で実績上位で、東京女子プロレス恒例のトーナメント「東京プリンセスカップ」出場権をかけたシングルマッチで対戦することも決まった(6月3日、新宿村大会)。

(エース・山下とのシングルマッチで「生まれ変わった」というラク)


まだ個人での勝ち星がないのがヒナノとラク。ただヒナノには柔道、サンボの経験があり、ジャッキー・チェンの大ファンということでアクロバティックな試合を目標としているようだ。技の的確性も増しており、加えて最近は“ウソ泣き”をマスターすることで先輩レスラーを翻弄する場面も。


ラクはアプガ(プロレス)入りするまでプロレスどころか運動とも無縁。アイドルとプロレスのバランスが、前者に大きく偏るタイプだ。ただ、そんなラクにも転機が訪れた。


5月19日の北沢タウンホール大会で、ラクは団体のシングル王者でありエースの山下とシングルマッチで対戦。山下とのシングルは4人の中で初めてだった。


アプガ(プロレス)にとって山下は、トップ選手であると同時にプロテストに立ち合ってもらった恩人でもある。不安、怖さ、感激、様々な感情が入り混じり、ラクは試合前からリングで涙を見せていた。


展開はもちろん劣勢。「誰が相手でも全力なので」という山下は容赦なく攻撃してきた。が、同時に「もっとこい!」とラクの攻めを真っ向から受けて立つ場面も。ラクはそれに応えるように気持ちの入ったエルボーやチョップを繰り出していった。技の数はまだ少ないが、できることはすべてやったという試合だった。


変形コブラクラッチで仕留めた後、山下は取材陣に「私が攻撃すればするほど、悔しいからやり返すっていう気持ちが見えたので。やってて楽しかったです」と語っている。一方のラクはここでも涙。ライトを浴び、声援を受けて闘うことが「自分じゃないみたい」と言うと「気持ちも変わったし、いつか山下さんに勝ちたいって思いました」とも。


試合を終えたその夜、ラクは動画サービス「SHOWROOM」の個別配信で2時間半にもわたって試合後の思いを語りまくった。


「人生で最高の日。今日で自分の中のすべてが変わりました。生まれ変わった気分」

「今日は胸がいっぱいで晩ご飯いらないです」

「アイドルという夢を目指してよかったし、ただのアイドルじゃなくてよかった。(過去に落ちて)悔しかったオーディションも、今は落ちてよかったって思えます」

「みなさんにもっと希望とか感動を与えられる選手になりたい。いつか自分の力でベルトを持ちたいです」


まるでデビュー戦直後のようなコメントだが、ラクは山下戦で本当の意味でデビューしたということなのかもしれない。アイドルとプロレスの同時進行という特殊なグループに入るまではプロレスのことを何も知らなかったし、スポーツ経験もないから「闘い、競い合って勝ち負けを決める」ということ自体にピンときてなかったのかもしれない。ましてプロレスは普通のスポーツともまた違う。


「みなさんの声援が本当に嬉しかった。私は小学校、中学校でも目立たないタイプで、名前を呼ばれたり応援してもらうっていうことが家族以外からはなかったので」


だがその声援は無条件で送られたものではない。エース・山下とのシングルマッチで果敢に立ち向かったからこそ、今までとは違う(とラクが感じるほどの)声援が引き出されたのだろう。自分が技を出すだけではなく、相手と闘うだけでもなく、観客に闘いを見せるのがプロレス。この日のラクは初めて、その魅力を心の底から味わったのだ。そうなるように導いた山下も、さすがエースである。


メンバー4人の競争も、いよいよここからが本格的なスタートとなるだろう。6月27日には、新宿FACEで「アップアップ東京女子プロレス(仮)~全員一緒にアッパーキック~」と題したイベントが開催される。東京女子プロレスとアプガ(仮)&アプガ(プロレス)のコラボイベントだ。アプガ(プロレス)にとっては、アプガ(仮)メンバーとそのファンにプロレスの試合を見てもらえる機会になる。


ここでどんなカードが組まれるか、成長した姿をしっかりと見せられるか。もちろんその成長ぶりも、普通のアイドルとも普通のレスラーとも違うものになるはずだ。


文・橋本宗洋

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