“変態”佐藤光留の狂ったこだわり プロレス・MMA日韓4連戦決行、QUINTET参戦「コンディションは整えない」

(MMAの試合を翌日に控えた24日、後楽園ホールの女子トイレ前で気合いを入れる佐藤)


老舗団体・全日本プロレスのレギュラーにしてMMAファイター、そして変態という世にも珍しい選手が佐藤光留だ。


パンクラスでプロデビュー、現在も「パンクラスMISSION」として所属しているが、師である鈴木みのるの背中を追うように“純プロレス”の世界にも。佐藤はもともと「プロレス団体」としてパンクラスに入門した選手だった。DDTでKO-D無差別級王座を獲得、総選挙1位にも輝いたことがある。現在の主戦場である全日本でも、世界ジュニア、アジアタッグ王者になった。


その一方、パンクラスの源流であるUWFへの強い思いから、ロストポイント制の“U系”ルールを採用したイベント「ハードヒット」も主催している。ここで見られるのは“強さ志向”のプロレスラーが繰り出す格闘技術であり、プロレスファンだった格闘家たちのMMAとは一味違う佇まいだ。


それでいて、キャッチフレーズはズバリ「変態」。DDTでの中澤マイケルとのタッグ名は「変態團」であり、猫耳&メイド服、女性用競泳水着をコスチュームにすることも。女子レスラーのグラビア、写真集について一家言持っていることもファンに知られている。


プロレス、格闘技に対する独自のこだわりもまた変態的、ということなのだろう。試合数は多くないものの、今もパンクラスをはじめMMAでの闘いを続けている佐藤。立ち技格闘技シュートボクシングのリングに上がったこともある。


蹴りやサブミッション主体の「ハードヒット」について「蛍光灯で殴り合うプロレスがあるなら、こういうシンプルな、ルールの縛りのきついプロレスもあっていいでしょう」と佐藤は言う。「プロレスだって勝ち負けが大事」、そして「格闘技としてのプロレスを見せたい」とも。その言葉を説得力のあるものにするためにも、MMAで闘い続けることが重要なのだ。

「やらない人の言うことは誰も聞いてくれないですから。掃除の大切さを掃除しない人に言われたり“勉強しないと大変なことになるぞ”って勉強してこなかった人に言われてもって話ですよ。僕には(持論を)証明する手立てがありますから、それはやりますよ」


5月25日には、韓国のMMAイベント「TOP FC」に参戦した。24日は全日本プロレスの後楽園ホール大会。MMAマッチ前日にジョー・ドーリングのラリアットを食らうのは佐藤くらいだろう。


後楽園から車で羽田空港に向かい車中泊、朝の便で韓国に向かい、ケージの中で闘って1泊だけして帰国。その日に全日本プロレスの新潟大会、続く27日には全日本・上尾大会と国内外・プロレス&MMAの4連戦を佐藤は完遂した。


過去にもプロレスとMMA、プロレスとシュートボクシングの連戦はあったが、海外遠征を挟むのは初。どう考えても狂ったスケジュールなのだが、プロレスラーに「狂ってる」は褒め言葉でしかない。そもそもこんなスケジュールにしたのは、オファーを受けた佐藤本人だ。それは「パンクラスのプロレスラー」としても必要なことだったのだろう。


TOP FCではキム・ドゥファンと対戦し、肩固めで一本負け。片足タックルから得意の足関節技に移行するも脱出され、上を取られるとパウンドからフィニッシュまで完全に防戦一方だった。


ベスト体重より重い階級での試合だったが、無差別級も厭わない佐藤は言い訳にはしないだろう。もちろん強行スケジュールも。試合前日、全日本プロレス後楽園大会のバックステージで、佐藤はこう語っていた。


「(MMAを控えて)コンディションですか?昔の僕は、コンディションを整えようとして弱くなってたんです。練習では動けてるのに試合で勝てなかった。今の僕のコンディション作りは、常に人前に晒されること。実際そのことで、リングでもケージでも体がよく動くようになってます」


だから相手のキムにとっては“但し書き”のいらない勝利だ。逆に佐藤にしてみれば“実力負け”。今のスタンスを変えないためには、もっと強くなるしかない。そのことは本人が誰よりも痛感しているはずだ。


とはいえ、佐藤の狂ったこだわりはもっとたくさんの人に知られていい。1泊2日の韓国遠征の最中には、6月9日の「QUINTET」参戦も発表された。


QUINTETは桜庭和志が立ち上げたグラップリング(組み技のみ)の団体戦・抜き試合トーナメント。佐藤は中村大介率いるチームU-ZUKIDOのメンバーとして参戦する。中村もUWFをルーツに持つ格闘家にしてプロレスラー。今回のチームも、中村がプロレスリングに所縁のある選手を選んだ。佐藤と中村は理想とするものが近く、「ハードヒット」での対戦経験もある。


ちなみにQUINTET出場時期も佐藤のスケジュールは詰まっており、5月30日から6月12日まで、14日間で9試合を敢行するそうだ。無茶なことをすると誰もが思うはずだが、「そんなの無茶だろ」と言われることも、佐藤のエネルギーになるのだから仕方ないのだった。


文・橋本宗洋

続きを見る