女子プロレスを全盛期に戻す!王者として、エースとして…アイスリボン・藤本つかさ、10周年マッチ激勝で決意のアピール

これは本当に決着がつくのか。何をすれば3カウント入るのか。途中からそんな不安にかられるような激闘だった。

(横浜文体のメインで王座防衛を果たした藤本。観客動員で前回大会を上回ったが、まだまだ満足はしていない)


8月26日、女子プロレス団体アイスリボンが横浜文化体育館大会を開催した。横浜文体進出は2年ぶり。藤本つかさ、松本都、星ハム子のデビュー10周年記念興行だ。アイスリボンは道場兼会場での定期大会に加え後楽園大会も好調。さまざまなコラボ企画、出張イベントマッチなどで女子プロレスの間口を広げてきた。キャッチフレーズは「プロレスでハッピー」。親しみやすさが魅力の一つだと言っていいだろう。


エンターテインメント色が強い試合もあるが、一方で“緩さ”は感じられない。選手たちのリアルな舌戦を含め、ハードかつリアルでもある。


横浜文体のメインイベント、シングル王座ICE×∞をかけた藤本つかさvs雪妃真矢のタイトルマッチは「アイスリボンの究極形」と言える闘いになった。団体の取締役選手代表を務める藤本と、挑戦者決定戦を制した雪妃。ビジュアル担当といったイメージもあった挑戦者だが、激しい打撃、大技の攻防の中で感情が露わになっていく。加えて切り返しの鮮やかさ、スピード感あふれる攻防もあって目が離せない。

(フィニッシュのビーナスシュートをはじめ、気持ちをぶつけ合うような打撃戦が目立った。挑戦者・雪妃もギリギリのところまで王者を追い込み大激闘に)


お互い蹴りまくり、投げまくって大ダメージを追いながらフィニッシュは許さず。驚異的としか言いようがないタフさを発揮した両者の闘いは、藤本がランニング式ツームストーンパイルドライバーで雪妃の脳天をマットに突き刺し、この試合2発目の必殺技ビーナスシュートを繰り出してようやく決着。藤本も雪妃も、精根尽き果てるまで闘い抜いたと言えるだろう。


が、ベルトを巻いた藤本はすぐに笑顔を取り戻し、チャンピオンとして、エースとして、また取締役として未来を語り始めた。

(勝利した藤本に駆け寄ったのは星ハム子(左)と松本都。この日は3人の10周年を記念する大会だった)


かつて主力選手が大量離脱した中、ライバルになってくれた雪妃たち後輩への感謝を語ると、雪妃に選手会長就任を要請。アイスリボンの体制をさらに固め、「女子プロレス界を全盛期に戻したい」と言う。


そのために、女子プロレスのレジェンドの1人である豊田真奈美をリングに呼び込んでスーパーバイザーとしての団体入りも頼み込み、OKをもらった。 インタビュースペースでは「テレビ中継(地上波全国ネット)を」と藤本。横浜文体での大会も「またやります。ビッグマッチじゃなく、やって当たり前にしたい」。集客についても満足していないという。


「口に出せば夢は叶うと思ってます。ここにいる(メディアの)みなさんが証人です」と東京ドーム進出の野望も。また47都道府県すべてからレスラーを輩出し、全国各地で凱旋興行を開催したいという。


「欲は深まるばかりですね」と語った藤本。タイトルマッチの勝因も、挑戦者ですら脱帽した欲の強さ、試合の勝ち負けだけでなくジャンル全体を考える野望の大きさだったのかもしれない。


藤本は女子プロレスを全盛期に「戻す」と言う。戻るべき過去は豊田も活躍した1990年代の団体対抗戦時代か、それとも若い女性ファンを熱狂させたクラッシュ・ギャルズの80年代か。

(レジェンド・豊田真奈美がスーパーバイザー就任。「豊田が認めた選手たち」というイメージも団体にとって大きな意味があるはず)


ただアイスリボンは、過去をなぞる必要はないだろう。時代が変わればプロレスのあり方も人気の出方も変わる。かつてプロレスラーは厳しい入門テストで選ばれた精鋭がなるものだったが、アイスリボンでは一般向けプロレスサークルを運営している。会場や仕事で出会った女性を藤本がスカウトすることも。試合後の物販(サインや撮影会などの接触)も含め、親しみやすさと間口の広さを最大限に活かすことがブレイクにつながるのではないか。


親しみやすいからといって、ナメられるような試合をしているわけでもない。男性ファン、女性ファン、コア層、ライト層。「○○向け」ではなくすべての層にアプローチできる、現代的な女子プロレスとしての高いポテンシャルを持っているのが、今のアイスリボンなのだ。


文・橋本宗洋

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