丸藤正道20周年マッチ ヒデオ・イタミとの“再会”は2人の“今”をぶつける闘いに!

9月1日、両国国技館で開催された丸藤正道20周年記念大会「飛翔」のメインイベントは、スペシャルなシングルマッチだった。

(丸藤との試合を振り返るヒデオ。“素”のコメントで取材陣に応じた)


丸藤正道vsヒデオ・イタミ。プロレスリング・ノアの中心選手として走り続けた丸藤と、元ノアで現在はWWE所属のヒデオの“再会”である。世界最大のプロレス団体・WWEが選手を他団体に派遣することは特例だ。


ノア時代、KENTAのリングネームで活躍していたヒデオ。丸藤とは名タッグチームとして人気を博し、またシングル対決がプロレス大賞の年間ベストバウトに輝いてもいる。


KENTAは2014年にノアを退団し、新たなリングネームでWWE(NXT)のリングへ。現在はクルーザー級部門「205 Live」に出場している。丸藤との対戦は5年2ヶ月ぶりだ。もちろん「丸藤vsヒデオ・イタミ」としては初対決である。


特別な相手との特別な試合。誰もがそれを分かっていたし、期待感は高まりきっていた。しかも試合を前に、ヒデオはこんなツイートをしている。

「正直俺の事呼びたいように呼んでください。良くも悪くもそこにこだわり全くないんで」


つまり「KENTAと呼んでもらっても構わない」ということだ。リングに上がった選手のリングネームはヒデオ・イタミだったが、ファンの多くは「KENTA!」と声援を飛ばした。


34分10秒もの長く、ハードな試合の末にヒデオは敗れた。しかしGAME OVER、ブサイクへのヒザ蹴り、go2sleepとノア時代の必殺技を勝負どころで繰り出し、ファンの心を熱くさせたことは間違いない。曰く「思う存分出しました。自分のフィニッシュなんで出さないほうがおかしい」。その一方で「WWEでのヒデオ・イタミ」のキャラクターは出さなかった。


だからといって「昔に戻った」というだけでもなかった。2人とも、あくまで現在進行形の現役選手なのだ。「こうやって誰かから必要とされることが、自分の求めていたこと」だとヒデオは語った。WWE入り以降、ヒデオはケガでの長期欠場という挫折を味わい、タイトル奪取も実現できていない。中邑真輔やASUKA、カイリ・セインの活躍ぶりと比べると、どうしても歯がゆさを感じてしまうし、誰よりも悔しかったのは本人のはずだ。


だから丸藤戦では「自分がまだまだできるということを確認したかった」。インタビュースペースでの第一声も「厳しい闘いでした。負けてしまって残念です」になった。思い出に浸るためにリングに上がったのではないのだ。WWEでの苦闘があったからこそ、この“再会”にも意味があった。


丸藤戦での彼は、「WWEスーパースターのヒデオ・イタミ」のキャラクターを貫いて闘ったわけではない。といって「ノアのKENTA」に戻ったわけでもない。「こだわりがない」という言葉は本音だったということだ。あえて言うなら過去も現在も知り、未来を見据える「(本名の)小林健太」としての闘いだったのではないか。


そんなテーマを感じていたのか、丸藤は“今”をはっきりとぶつけてきた。華麗で過激でひらめきに満ちた闘いを見せてきた丸藤だが、現在はギャッチフレーズである“ノアの天才”ぶりを間合いやリズムの巧みさ、技のキレという部分で発揮している。闘いのベースは、ここ数年で磨いてきた逆水平チョップとトラースキック、フックキック、それに虎王(ヒザ蹴り)。エプロンでのパイルドライバーという危険な技を見せる場面もあったが、連発はしない。場外鉄柵超えのダイブもお互いが阻止している。


フィニッシュ前の虎王とトラースキックの乱れ打ちは切れ味充分。そして最後の技、ポールシフト式エメラルドフロウジョンは現在の丸藤にとって最高のフィニッシャーであり、KENTAがノアを去った後で開発したものだ。


試合後の丸藤は、こう言ってヒデオを称えた。

「昔やった感覚を体が覚えてた。でも違うところも感じましたね。“こういうところをあっちで学んでるんだな”と」

「(ヒデオは)悔しいけど憧れる。世界を股にかけて試合してるアイツがうらやましい。だからこそ、俺はこっちでしっかりやっていく」


ここまで、WWEで決して満足のいく結果が残せているわけではないヒデオ・イタミという選手を、誰よりも認めていたのが丸藤だったのだ。これは丸藤のデビュー20周年記念試合。しかしヒデオのキャリアにとっても大きな意味のある闘いだった。


文・橋本宗洋

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