赤井沙希、伊藤麻希の試合ぶりに“違和感”「良くも悪くも対戦相手と戦ってない」

東京女子プロレスを主戦場にしながらDDT総選挙に立候補した“クビドル”伊藤麻希が、選挙期間スタートとなる9月4日に「DDT LIVE! マジ卍」出場を果たした。

(試合に勝ち、伊藤への「違和感」について言及した赤井。伊藤の勢いを感じているからこそ、気になっていたようだ)

(C)DDTプロレスリング


このDDT総選挙、大会観戦やグッズ購入などでファンが投票券をもらえるのだが、東京女子の大会は対象外。DDTでの試合が大事な「選挙戦」となる。


YouTubeで公開中の政見放送で「神7入り」を掲げた伊藤。この「マジ卍」新木場大会では赤井沙希と対戦した。


DDTグループの女子レスラーというだけでなく、芸能界からプロレス界へ足を踏み入れたという意味でも伊藤の先輩にあたる存在だ。


今回はシングル初対戦。試合はスタンド、グラウンドともに赤井が圧倒する展開となった。蹴りにせよ関節技にせよ、やはり力量の違いは否めない。まして赤井にとっても、総選挙上位進出を狙うための大事な試合だ。


伊藤は赤井の攻撃を耐えに耐え、雄叫びをあげて反撃へ。アイドル界一デカいと言われる顔面を活かした頭突きで赤井の蹴りを迎撃すると、倒れこみ式の頭突きも。さらに逆エビ固めで追い込んでみせた。気持ちを前面に押し出す伊藤の闘い方は、相手が強いほど光る。最後はフットチョークで敗れたが、試合後の「勝てなくてもお前らの明日の糧になる試合をするから!」というマイクを含め、伊藤らしさが存分に出た試合だった。

(赤井戦を終えた伊藤はインタビュースペースで思わず涙)


だが、伊藤はインタビュースペースで涙を見せた。曰く「伊藤はいつも東京女子ばっか出てるから、一歩外に出ると身の程を知るっていう感じです。伊藤はプロレス界で一番になれると思ってるけど、DDTにくるとそうじゃないかもしれないって」。確かに今までとは違う相手であり、観客も違う。東京女子での伊藤は中心選手の1人になっているが、今回の試合は「前半戦の一つ」というムードもあった。


赤井は伊藤と対戦してみた感想として「自分の中で“伊藤はこういうものだ”と窮屈に感じてるんじゃないか」と語っている。またブログでは「良くも悪くも対戦相手と戦ってないんだ、彼女はずっと自分自身と戦ってるんだって気づきました」。


以前から、赤井は伊藤の試合ぶりに違和感があったのだという。これは1.4後楽園ホール大会で伊藤と対戦した男色ディーノが残した「伊藤ちゃんはまだ素材、料理される側。自分が料理人になりなさい」というコメントとも重なるものだろう。


泣き、叫び、不器用ながらも気合いですべてを押し切って伊藤はここまできた。東京女子プロレス屈指の人気選手だし、タイトルマッチも経験している。


今まで通りの“伊藤らしさ”でも充分すぎるほどインパクトはあるのだが、ここからもう一段階、成長するには何が必要か。赤井の言葉はヒントになるはずだ。まだキャリア2年足らず。「伊藤の試合はこういうもの」と枠を決めてしまう必要もないだろう。


筆者は先月、伊藤にインタビューした際「プロレスラーかくあるべしという信念はあるか」という質問をしてみた。“らしさ”に縛られていないか気になったからだ。


答えは「ありますけど“どうだ、これがプロレスラーだ!”みたいに振る舞ったことはないですね。そのとき思ったことを言って、やって」というもの。その信念を曲げないことが大事なのか、あるいは変化が成長につながるのか。決して器用になる必要はないが「気持ちが最大の武器」と評価されるのは新人レベルまでかもしれない。今の伊藤はベルトを狙い、DDT全体の中で「神7」入りを目標としているのだ。


この総選挙は、東京女子で培ってきた“伊藤らしさ”をDDTしか見ていないファンにも広げるチャンス。同時に脱皮の機会にもなりうる。本人がどこまで自覚的だったか分からないが、総選挙出馬は“伊藤ヒストリー”において絶妙なタイミングだった。

(頭突き、逆エビ固めと健闘した伊藤。しかし「健闘」は見慣れた光景でもある)

(C)DDTプロレスリング


そんな伊藤をバックアップする動きもある。総選挙ではDDT経営の飲食店でも会計の額に合わせて投票券を配布。そのためプロレス&スポーツバー・ドロップキックの東京女子プロレスイベント開催にあたり、天満のどかが「DDT総選挙、東女からは伊藤しか出ないんだよ!ってことは東女を応援したい大きなおともだちは伊藤一択ってことくらいわかるよな!な!!」とツイッターでファンに呼びかけ。伊藤にも「パーティーしよう」とイベント登場をうながした。他の選手たちも、次々に「応援する」「投票した」とツイート。


端的に言って友だちができにくいタイプの伊藤には願ってもない支援であり、東京女子プロレスの団結力が感じられる。いや、この記事からしてそうなのだが、みんな何かと伊藤が気になるのである。


赤井も「伊藤選手みたいなタイプは他の団体にはいない、貴重な存在」だということは認めており、やはり期待している。もちろん伊藤自身も、涙を流しつつ「伊藤には伸び代しかないから」。ツイッターには「DDTに出ると、伊藤は井の中の蛙だったんだなって感情しか湧いてこないけど、この感情のおかげで努力できるな」と記した。


井の中の蛙、大海を知らず。しかし知らなかっただけで通用しなかったとは誰も言っていないのだ(島本和彦著「逆境ナイン」より)。


文・橋本宗洋

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