「怪しい人間、胡散臭い人間から目を背けちゃダメ!」 高木大社長“どインディー原点回帰”公募で大会開催へ

現在、DDTではファンの投票によって順位が決まり、1位の選手にはKO-D無差別級王座への挑戦権が与えられる「ドラマティック総選挙」が開催中だ。

(今成とアントンの殴り合いはエモーショナルとしか表現できないものだった)

(C)DDTプロレスリング


この総選挙には個人部門だけでなくユニット部門もあり、トップになれば興行をプロデュースすることができる。総選挙期間中はYouTubeでの政見放送をはじめ、選手たちの主張も活発になる。


9月8日の成増大会では、ユニット「豚ing(ブーイング)2018」の高木三四郎と松永智充がリング上でアピール。高木曰く「今のDDTにはどインディーか足りない!」ということで9月23日・後楽園ホール大会の本戦前、アンダーマッチ枠で、インディーの中でも特に小規模なドインディー、ローカル、学生プロレスの選手を公募、豚ingの新メンバーオーディションを開催するという。


「今はサイバーエージェントグループでも、もともとDDTはどインディー。怪しい人間、胡散臭い人間から目を背けちゃダメなんです!」


高木の言葉は、DDTコアファンが求めているものとも合致するのではないか。なにしろ高木は大会中でもツイッターのエゴサーチを欠かさず、ファンの反応やニーズを探っている。


この「どインディー原点回帰」は新メンバー募集にとどまらず、高木はどインディー選手を集結させた興行「ALL DOIN」の開催も宣言。ちなみに最近、アメリカではケニー・オメガらが出場した「ALL IN」という大会が行なわれたが、高木は「それはおそらくパクリ」、「ケニーたちがこっちの意を汲んだんじゃないか」と言い張るのだった。

(試合後に抱き合う両者。今成がガンプロを背負い、総選挙に出馬したことで実現した“再会”だった)

(C)DDTプロレスリング


ちなみに応募方法はというと、ハッシュダグ「#ALLDOIN」に参戦希望の旨を書いてツイートするだけ。エゴサした高木から連絡があり、あとはDMのやりとりで、という実にカジュアルな流れになっている。


そのこともあってか全国各地の選手、学生プロレス経験者などが続々と参戦の名乗りをあげ、わずか数日で募集をいったん休止するほどの事態に。この企画、「どインディーだが品質保証」ではなく、むしろ「品質が保証されていない面白さ」がポイントだろう。


そしてこの成増大会では、偶然にも学生プロレス出身者同士の好カードが組まれていた。アントーニオ本多vs今成夢人である。


2人はともに武蔵野美アントンは武蔵野美術大学(ムサビ)出身で、今成は多摩美術大学(タマビ)出身。受験生だった今成は見学に行った文化祭で学生プロレスに触れ、OBとして参戦していたアントンに「一目惚れ」したという。術大学(ムサビ)出身。受験生だった今成は見学に行った文化祭で学生プロレスに触れ、OBとして参戦していたアントンに「一目惚れ」したという。


〈「僕は大学に入ったら、学生プロレスをやろう」と高校3年生、18歳の今成青年はその時にそう思った〉


今成はブログにそう記している。学生プロレスの締め括りとなる試合で今成が希望し、対戦した相手もアントンだった。


それから時が経ち、アントンはコミカルな試合を中心にしつつ多くのファンに愛され、後輩レスラーに慕われる存在になった。今成は大学卒業後、テレビ局に就職するも挫折。DDT映像班に勤務しながらガンバレ☆プロレスで選手としても活躍している。今回の対戦は、今成がガンプロの新エースとして、団体を背負って総選挙に出馬したことで実現したものだ。


思い入れがありすぎる特別な試合に、入場の時点で感極まっていた今成。アントンは勝負に徹してグラウンド、場外戦で厳しい攻撃を見せる。今成も徐々に反撃していき、クライマックスとも言えるナックルパートの乱打戦に。


はっきり言えばグチャグチャ、技の美しさや精度よりも気持ちが先走った殴り合いで、だからこそ見る者の胸に迫るものがあった。フィニッシュはアントンのダイビング・フィストドロップを迎撃してのサムソンクラッチ。一瞬の切り返しで今成が3カウントを奪った。


“憧れの人”に勝つというのはどんな気持ちなのか。タイトルマッチではない、メインイベントでもないけれど、今成夢人という人間にとってはとてつもなく重い意味を持つ勝利だった。

(「ALL DOIN」開催を宣言した豚ing2018の高木と松永。高木はコメント中もどインディー選手たちとDMでやりとり)

(C)DDTプロレスリング


再び、今成のブログから引用しよう。


〈アントンさんがいなければ、僕は一体何者であったのだろうか。つくづくそう思う。あのときムサビの中央広場でアントンさんを見かけてしまったことが、全てを狂わせた。狂わされたのか。狂わさられなければ、どうなっていたのだろうか。普通に生きていたのだろうか〉


〈自分が何者であろうとも、何者でもなくてもいい。何者でもなくとも、僕らにプロレスがあったということだけで十分だと思った〉


敗れたアントンは、ツイッターにこう書いている。


〈今日の試合は(も)、自分の人生すべてを合わせたくらいの価値があった、そもそも私の人生に価値などあればの話てはある〉


もちろんあるに決まっている。それはたとえば、今年行なわれた竹下幸之介戦や佐々木大輔戦、彰人戦、そして今成との試合に込められたエモーションを感じた人間なら分かることだ。いや普段の試合で繰り出す「徹夜で考えた昔話・ごんぎつね」の破壊力からしてアントンにしか出せないものだ。


プロレス界には超人がたくさんいる。奇人に変人、中には凡人もいる。そして今成vsアントンは詩人たちの闘いだった。詩人たちを育んだのは学生プロレスで、彼らを再会させたのは“どインディー”が原点のDDTだ。


文・橋本宗洋

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