「なぜ今、棚橋弘至は“凄み”が増しているのか?」 勝利への“泥臭さ”を受け入れた不屈のゾンビ

 2月11日のエディオンアリーナ大阪大会で、IWGPヘビー級王者・棚橋弘至がジェイ・ホワイトとの初防衛戦に臨む。前哨戦では、ジェイが事あるごとに棚橋が痛めているヒザを重点的に攻撃、直接対決に向けた準備万端の印象を与え、第67代王者のV1に黄信号と連日報道されている。しかし満身創痍の身体は今に始まったことではない。特に「対ジェイ」に関しては、ことごとく自分のペースに引き込む円熟かつ何をしでかすかわからない史上最強なエースがそこにいる。


 昨年末から1.4でのオカダ・カズチカ撃破、そして今シリーズの勢いを見る限り、大方の予想がジェイ・ホワイトによる新時代到来を肌で感じとっているだろう。今シリーズの目玉だった筈のオカダ・棚橋の夢のタッグコンビも、度重なるジェイの襲撃に大の字になる姿ばかりが目立ち、熱狂も霞んで見えているのが現状だが、対シングル戦に関しては額面どおりに棚橋弘至というレスラーを見るのは危険かもしれない。


 2018年の1.4でIWGPインターコンチネンタル王座、10月のIWGPヘビー級王座挑戦権利証争奪戦と大勝負で棚橋と2連敗を喫しているジェイにとって大一番は「3度目の正直」だ。対シングル戦でジェイは大善戦しながら、棚橋の魔界に引きずり込むような試合運びの妙に飲み込まれている。2018年の1.4では場外での鉄柵での執拗な攻めに、グランドでの監獄ロック、低空のドラゴンスクリューと、圧倒的優位に試合を進めながらも、徐々にペースを握られ、気がつけば背後へのボディアタックからのハイフライフローに撃沈。


 続く10月のIWGPヘビー級王座挑戦権利証争奪戦でも、外道の介入、急所、イス攻撃と万策を尽くしつつも、ブレードランナーの隙を突いた起死回生のスモールパッケージ・ホールドで丸め込まれ、カウント3を奪われ役者の違いを見せつけられた。


 ジェイの棚橋対策は首尾一貫してヒザへの徹底した攻めである。しかしヒザを攻めても攻めても棚橋は、リング上で顔をしかめながら足を引きずる姿を見せてなお立ち上がる。華やなエースと不屈のゾンビのような精神力、この二面性を持つ棚橋の恐ろしさを身をもって、ジェイはこの1年相まみえては思い知らされている。3月2日の札幌大会では、ヒザ潰しを露骨に意識した「TTO(タナ・タップ・アウト)」という変形裏4の字でジェイはギブアップを奪ってみせたが、やはり前哨戦のタッグとタイトルを賭けたシングル戦ではひと味もふた味も違う試合展開になるだろう。


 どうしても受けの試合が増えたせいもあるだろう。キャリア晩年になり「チェンジ・オブ・ペース」にさらに磨きがかかった。前述の2度のシングルでは、追い込まれた場面から場外への捨て身の「ハイフライ・アタック」でいずれも流れを変えた。10月の試合ではお返しとはいえ急所攻撃や、奪ったイスを利用しダメージを与えるなりふり構わない戦い方もみせた。ヒザを庇うあまりに高さもなく着地が流れるスリングブレイドは決して美しくはないが、勝つための泥臭さを受け入れた棚橋は過去の最強を謳った時期よりも、しぶとく粘り強く勝つための処世術を身に着け凄みを増している。


 2019年は棚橋弘至にとってデビュー20周年というアニバーサリー・イヤーでもある。果たしてデビュー戦の10月10日、プロレスラー棚橋弘至が誕生してちょうど20年目の日をチャンピオンとして迎えることができるだろうか。過去のキャリアにおいても最も過酷な状況から奇跡のV字回復で手にした8度目のIWGPヘビー級王座の防衛ロードで、改めて「なぜ今、棚橋弘至なのか?」が問われる1年が始まる。

(C)AbemaTV


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