ONE Championship、日本大会「A NEW ERA」が示した“格闘新時代”とは何か?

 3月31日、東京・両国国技館に初上陸した格闘技団体「ONE Championship」。イベントタイトルに「A NEW ERA -新時代-」と冠し、チャトリ・シットヨートンCEOは総合格闘技の先駆者として歩んできた日本での開催の重要性についてことあるごとに語ってきた。また今回、両国国技館という場を選んだことについても「歴史を考えたうえで、数々の格闘技が開催されてきた素晴らしい場所で試合をすることは私たちにとって特別なこと」と大会後の会見で語り本大会を総括した。


 そしてイベントタイトルどおり、世界の総合格闘技の潮流に対するカウンター、そして日本の総合格闘技にとって「新時代」を感じさせる大会となった。

 数々のファイトが印象に残るなか、元UFCライト級王者エディ・アルバレスがティモフィ・ナシューヒンにライト級トーナメント1回戦でTKOされるという波乱があった。大本命が伏兵に食われるというのは、勝負の世界では多々あることだが、波乱を演じたナシューヒンは、ONEで長年激戦を繰り広げてきた歴戦のツワモノでもある。経歴や名声だけで“一筋縄ではいかないリーグ”であるという強烈なメッセージとなった。


 そしてONEのアイコンともいえるアンジェラ・リーが初黒星を喫した。アメリカでのロンダ・ラウジー・ショックになぞらえる人もいるかもしれないが、アトム級からストロー級へと階級を上げ、中国のション・ジンナンに挑み、壮絶な打ち合いの末に最終ラウンドで崩れ落ちた。ベストを尽くしての敗戦だ。ショッキングな敗戦の一方、腕を取られても屈しないジンナンという強烈な個性、不屈のチャンピオンの存在に気づいた人も多いと思う。ジョン・ジンナンは「体重をアンジェラの階級へ下げての再戦にも応じる」という強気なコメントを出しているという。この2人の再戦は年々盛り上がりをみせる世界の女子格闘技をリードする名カードになりそうだ。

 日本勢に目を向けてみよう。この大会を前に修斗とパンクラスとONEとの提携が発表され、日本でトップからONEへの挑戦という流れはこれから活発化することが予想された。その中で今回、若松祐弥と仙三というフライ級のトップランカーが挑んだ今大会。残念ながら共に1回戦敗退となってしまったが、若松はデメトリアス・ジョンソンという世界最高峰に触れ、緊急参戦となった仙三は、ONEきっての気鋭、ダニー・キンガドと互角以上の戦いを繰り広げた。打ち合い真っ向勝負の仙三の積極的なスタイルはONEのルールにも好まれる印象があるだけに今後の戦いに期待したいところだ。


 昨年の名勝負の再現が期待された長谷川賢とアウンラ・ンサン。しかし長谷川は、ンサンの強力な打撃に完敗。特に強烈なミドルに長谷川の胸元がみるみる変色する姿を目の当たりしたが、その後長谷川は肋骨を骨折し、内蔵からの出血が止まらずに「肺から2リットルほどの出血」があったことをSNSで報告している。


 キックボクシングルールで臨んだ秋元皓貴はヨセフ・ラシリに判定負け。前回のデビュー戦で1Rにダウンを奪われながら、逆転KO勝ちという衝撃デビューを飾ったが、日本でその再現は叶わなかった。キックでの実績から空手の世界、そしてONEと転身してきた秋元、キックルール20連勝が止まる残念な結果となってしまったが、はじまったばかりのONEのキックルールで間違いなく主役になる選手の一人。今後の世界の強豪との戦いにぜひ注目してほしい。


 日本勢が苦戦するなか希望を与えてくれたのは、ONEに長年参戦している青木真也とV.V Meiのふたりのベテランだった。V.V Meiはクセニア・ラチコヴァのリーチのある打撃に苦労しながらも試合終了間際に見事な1本勝ち。アンジェラvsジンナンの再戦がフォーカスされた中、「V.V Meiここにあり」をONE女子リーグの古参として強烈に印象づけた。

 トリを飾った青木真也も、最も難しい試合でフォラヤンを相手に肩固めフィニッシュという最もわかりやすい形で強さを示した。日本勢の黒星が目立つ中で、“ある意味空気の読めない男”が空気を読み日本のファンの期待に応えるというねじれ現象は我々に希望を与えた。王者となった青木は次に戦いたい相手に新たな時代の寵児といえるクリスチャン・リーを使命した。脱力感溢れるコメントが多い中、すでに未来に向けての宿題をしっかり示す。「この男は何がワクワクするかわかっている」。改めてそう実感させられた。


 「新時代」という意味合いでは、ONE Championshipは東京大会で様々な形で団体として新たな時代を迎えたといえる。武道の伝統が息づくアジアを舞台にローカルヒーローを次々と誕生させる。そんなミッションを軸に勢力を拡大してきたONEだが、デメトリアス・ジョンソンとエディ・アルバレスという元UFC王者が参戦し、いよいよ世界を意識した総合格闘技のプラットフォームとして本格的に動き出した。リップ・サービスも多分に含むとは思うが、チャトリCEOは将来的にはUFC王者との統一戦という言葉がでたのも、そんな意識の表れだろう。


 選手にとっては団体の垣根を超えた“肩書不要のタフな時代”の幕開けとなるが、ファンにとっては「一番強いヤツは誰か」を知ることができる楽しみや喜びも広がる。アジア発のヒーローたちが世界と向き合いながらさらなる高みを目指すONE Championship。やや大げさではあるが「ONE日本大会は、そんな壮大な物語の幕開けだった」と語られる日が来るかもしれない。


(C)AbemaTV


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